黒木町研修日記1

3時間目のチャイムがなると同時にかばんとコートをつかみ、自転車で自宅へと急ぐ。
スポーツバッグとおみやげの九州大吟醸をガッっと抱え、ブレーカーを落としたのを確認してドアをしめる。

今日から黒木町の椿原さんのお宅で5日間お世話になる。
バイトの予定が変わってすっぽり空いたGWに、NPOのしゃちょうの紹介でギリギリで出来た小旅行の予定。
自身初の泊り込みでの農業研修だ。
知識があるわけでもない。特別なスキルがあるわけでもない。だから、必死に働いてみようと思った。
働く中で、何かがつかめるかもしれない。五感をフルに使って、ぐったり疲れて帰ってこよう。そう決めた。

福岡から黒木町までは地下鉄、JR、バスで2時間強。
博多を出た快速列車の窓の外はすぐに典型的な日本の郊外の風景へと変わり、客の数も鳥栖を境にめっきりと減った。

駅前で田舎のヤンキー集団にビビり(初めて見た…)、バスの中で繰り広げられる女子高生の方言を必死にリスニングし、そして挫折し(たぶん、クラスの誰がかっこいい、とかそういう話だったと思う)、ちょっとだけカルチャーショック。
東海地方からこっちに来てから何度目かの言葉の壁を感じたかも知れない。黒木での生活がほんの少し不安に…。

バス停まで迎えに来てくれたのは、四季菜館の館長さんであるマリ子さんと孫のダイチくん。
ダイチくんの案内で四季菜館をひと通り見学。トイレの位置、お風呂の位置、部屋階段の配置etc。
ダイチくんお気に入りのこいのぼりも見せてもらった。あ、言い忘れたがダイチくんは2才。しっかり者。
ながしぇくん(ダイチくん語)は意外とすんなり受け入れてもらえた。

夕食がかなりおいしい。
7分米というのをはじめて食べたし、出てくる手料理が全部おいしい。
ただ、「どうですか?」と聞かれて「おいしいです!!」としか答えられない自分の語彙のなさが恥ずかしかった。
グルメリポーターのようにはいかなくても、もうちょっとなんか言えよ、自分。と猛反省。

夜は椿原さんに有機栽培米の純米吟醸酒を飲ませていただいた。
キンキンの冷酒で、キリっとした味わいがあって、初めての感覚だった。
「酔いそうですね〜」というと、「お酒を飲んで酔わないのは、お酒に対して失礼」と笑顔で返された。
気づかなかった。言われれば確かにそうかもしれない。

行政とのかかわりや、お酒の話をしながら、明日以降のことについて決める。

明日は早い。もう寝ることにしよう。黒木の空を眺めながらペンを走らせる、そんな初日の夜11時。