田んぼのわけ

環境創造舎ではいくつかの田んぼにかかわっている。一つは九州大学農学部1号館屋上の「屋上田んぼ」である。二つめは、棚田百選にも選ばれた星野村の広内・上原地区の棚田だ。
一番のメインは九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンにつくられた小さな小さな田んぼである。今年で3年目の米づくりになる。
この田んぼ、「環境田んぼ」とか「環境創造田んぼ」とか、いろんな呼ばれ方をしているが私は「環境創造田んぼ」に思い入れがある。
なぜ、田んぼなのか?

九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンでは、できるだけ環境に負荷を与えないような造成を行おうと、矢原先生が中心となって「生物多様性保全事業」が実施された。徹底的な植物種の調査と、いわゆる森の引っ越しや池の引っ越しを行ったのである。
そうして守られた森や生きものを皆で楽しく持続的に管理していこう、というのが私たち環境創造舎のシゴトである。

では、なぜ田んぼなのか。
森が適切に管理されても、それだけでは生物の多様性、生物の生息環境は十分に保全されたとは言えないのではないかと考えるようになった。わが国は、2400年間、米づくりが行われてきて、そこを生息地とする生きものが数多くいる。そうした生きものを守るためには、生物多様性保全ゾーンの中にも田んぼが必要なのである。
しかも、米づくりという活動は、単なる森の管理とは異なった生産の喜びがある。

そこに作られる田んぼは、多くの生きものが集まってくるような田んぼにしようと考えた。米づくりが二の次という全国でも珍しい田んぼである。

メダカが絶滅危惧種である。その理由はいろいろ考えられているが、一番の理由は基盤整備だろう。最近の田んぼは、裏作を行いやすいように、また、機械での作業がしやすいよう、田んぼを乾かすため、水路が深く掘られている。つまり、田んぼと水路の間に大きな段差が作られた。
そもそもメダカは、田んぼで産卵する生きものであった。田植えの時期になると、田んぼから流れ出る代かき水を感じ取って、川から、水路から田んぼに遡上し、そこで卵を産んだ。卵を産み、子どもが育つには、暖かくて、食べ物(ミジンコとか)がいっぱいあって、流れがない(子どもは流れの速い川だと泳げないでしょ)田んぼがbestなのだ。
しかし、基盤整備によって田んぼと水路の間に大きな段差ができてしまったので、メダカは田んぼに遡上できなくなってしまった。そうしてメダカは田んぼという子供を産み、育てる環境を失い、絶滅が危惧されるまでになった、と言われている。

だから、環境創造田んぼは水路と田んぼの高さが全く同じである。それゆえ、水管理が非常に難しい。だけど、実際に、メダカたちは田んぼに集まってくるのである。タイコウチも同様だ。そんな生きものたちを見ていると、生きものたちのための田んぼがあったっていいじゃないかと思う。

明日、スタッフ数名が、環境創造田んぼに田まわりに行くらしい。稲がどうなっているか、田んぼがどうなっているか、生きものがどうなっているか、非常に楽しみである。
私は行けない。。。。明日から1週間ドイツ出張だからだ。このブログでの報告を楽しみに待っていよう。
【しゃちょう:さとうごうし】