阿蘇の視察日記③【しゃちょう】

内牧商店街活性化の取り組み
内牧商店街も例に漏れず、昔は左うちわで、現在は息も絶え絶えの町である。宿屋は、店が頑張っていないから人が訪れないという。店は、宿屋に魅力がないから人が訪れないという。日曜日には「お客が来ないから」といって店を閉める。「店が閉まっているからお客が来ない」と言っても「?」という具合である。

そこに一人の救世主が現れた。吉澤寿康君である。30そこそこの若手である。彼は、ツアーの添乗員を数年やったあと、バイクで日本一周を行い、阿蘇に住み着き、バイク屋をやりはじめた。

こいつが、添乗員をやっていたこともあって弁が立つ。口が達者である。つかみも、笑わせどころも、まとめかたも、もう形ができあがっている。私も結構しゃべれる方だと思っているが、こいつには負ける。

しかも、アイデアも行動力もすばらしいのである。

  • トマト戦略

彼はあるテレビを見ていて思いついたそうだ。そのテレビでは、神戸の子供が「阿蘇のトマトは美味い」と喜んで食べていたのであるが、「?」と思ったそうだ。それは、緑色のトマトを収穫し、神戸に着くまでに赤くなったトマトであって、本当の完熟トマトではない。実際の阿蘇の完熟トマトは本当においしいそうだ。でも、農家は、地域に出荷するルートがないし、旅館や飲食店は地域の完熟トマトを入手するルートがなかった。簡単なことなのだけれど、それができないのが現実であり、地域の中での固定観念だ。彼は、農家のかわりに営業をやったらしい。農家が直接、旅館や飲食店に届けるというルールで、そのシステムを確立した。

まぁ、感心するのは、農家が直接配達するというルールだ。飲食店や旅館と農家が直接出会う機会が生まれることによって、品質の向上が図られたり、ほかの農産物でも提携が生まれるのだそうだ。

  • ブルーベリー戦略

内牧町のある豪農。ブルーベリーを栽培していたのだが、それは収穫していなかったらしい。ブルーベリーの収穫は、手間がかかるので、人を雇わなければなるからだ。一人1日頑張っても20kgを収穫するのが限界らしい。
そこで、彼が経営するバイクショップのお客さんにブルーベリー収穫体験という名目で、ブルーベリーを収穫させ、その一部(1割)を参加者に提供しながらも、のこり9割を地域の
店に安く売ると言うことをやり始めた。
農家も参加者もお店もみんなが幸せになるというシステムができた。

  • とまっとべりー戦略

「とまっと」とはトマトと「滞在する」の「とまっと」であり、ベリーはブルーベリーとvery goodのベリーである。
協力してもらう店、1店1店に、トマトかブルーベリーにまつわる商品を1品を開発してもらい、それをmapやカタログとして総合的に広報しようという戦略である。例えば、その商品にはトマトかき氷なんてものがあったり、トマトロールケーキなんてものがあったりする。居酒屋では、トマトステーキとか。

そうして内牧商店街には活気が戻りつつあるという。実際、いくつかの店にも入ったが、あやはりセンスと想いがつまっていた。
昔の湯布院のにおいがする。
本当に観光客が増えたとき、そこが勝負だ。