火曜虫劇場


『本の虫日記』〜地下書庫探検編〜


本の虫といっても、紙魚のことではありません。
本に心を奪われてしまった人間です。


今日も空は快晴だというのに、地下にもぐっていい言葉を探します。
自分しか知らない自分の感性という触覚を頼りに、いい言葉の発するにおいを嗅ぎつけます。


もっぱら最近は蛙のにおいに敏感なようで、今日もいい言葉みつけました。


「河童と蛙」草野心平

   るんるん るるんぶ
   るるんぶ るるん
   つんつん つるんぶ
   つるんぶ つるん

河童の皿を月すべり。
じゃぶじゃぶ水をじゃぶつかせ。
かほだけ出して。
踊ってる。

   るんるん るるんぶ
   るるんぶ るるん
   つんつん つるんぶ
   つるんぶ つるん

大河童沼のぐるりの山は。
ぐるりの山は息をのみ。
あしだの手だのふりまはし。
月もじゃぼじゃぼ沸いている。

   るんるん るるんぶ
   るるんぶ るるん
   つんつん つるんぶ
   つるんぶ つるん

立った。立った。水の上。
河童がいきなりぶるるっとたち。
天のあたりをねめまわし。
それから。そのまま。

   るんるん るるんぶ
   るるんぶ るるん
   つんつん つるんぶ
   つるんぶ つるん

もうその唄もきこえない。
沼の底から泡がいくつかあがってきた。
ウサギと杵の休火山などもはっきり映し。
月だけひとり。
動かない。


ぐぶうと一と声。
蛙がないた。


草野心平の詩でした。
昭和53年6月19日以来、陽を浴びることになった今日のこの詩集。
今日もいい本ごちそうさまです。

*** るんるん るるんぶ るるんぶ るるん ***
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【たにのき】